極私的全国民必聴歌 おもいで岬

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 御存知・新沼謙治のデビュー曲。これが良い。「おもいで」と言うとき、我々はともすると「良い想い出」ばかりを追いがちである。この歌、3番まで聴いているときは「自然っていいなぁ」とか「素朴な土地っていいなぁ」とか、歌われた「おもいで」を勝手に美化するかも知れない。

 しかし4番で、そのような聴き方が甘かったと思い知らされる。「耐えてしのんで 船のりが/行方たずねる 眼をはらす」。実はこの歌詞、4番まで一貫して「自然の中での小さい人間の暮らし」を描いている。そのくせ、4番には自然の描写がない。これがすごい。

 実は冬の描写は1番に「たき火」と「流氷」として存在する。こう見ると「顔をゆるめる」も生やさしい笑顔でないことが知れよう。都会にいると思われる語り手は、岬のおもいでに、何を求めているのだろうか。

連歌:「誰のせいでもない雨が」(中島みゆき)、「竜飛崎」(よしだたくろうかまやつひろし)、「襟裳岬」(吉田拓郎)、「俺らいちぬけた」(岡林信康)など。