少しのことにも、先達はあらまほしきことなり。

・クイズではなく、お笑いのことを少々。

 

マヂカルラブリー優勝。「これは漫才かどうか」という議論が起こっているようだが、そういう議論はテツandトモとかプラン9で終わっていると思っていました。

 

・「正統派かどうか」という議論もあるようだ。「マヂカルラブリーは正統派ではない」と結論づけたところで何の意味もないと思うが、ひとつだけ言っておく。では「霜降り明星」はあなたの言う「正統派」でしたか? 

 

・ここでいう「正統派」とは、会話のような掛け合いを主としたものを言うのだろうが、会話が成立していないスタイルの漫才もしっかりと確立されている。ツッコミを無視してただひたすらボケ続けるのに対し、合いの手のようにツッコミを入れていく漫才は、M-1ならチュートリアル霜降り明星が優勝している。フットボールアワーのSMタクシーもそれに近い。最近だと、ウーマンラッシュアワーもそうだ。

 

・余計なことを付け加えると、チュートリアルの漫才を優勝する前年と優勝した年で比べると、明らかに前年の方が会話が成立している。福田さんの言葉が多いのだ。彼らは会話を成立させない方向に改良する戦略をとったことで、優勝をものにしたのである。こういうスタイルの漫才が生まれてくるのは、漫才の進化としか言いようがない。

 

・時を戻そう。「うなずきトリオ」という言葉があるが、ツービートもB&B紳助竜介も、基本的には会話というスタイルを崩していない。それまでの時代の漫才の構造を崩さないまま、ボケの言葉を高速にして増やし笑いを細かく刻むという、当時の最先端の漫才(もっと言えば、M-1でも勝ちパターンといえる漫才)を同時的に生みだした。このスタイルは非常に応用しやすい万能パターンなのだが、当時の漫才師で追随する人はほとんどいなかった。現在ではこういう漫才を「正統派」と考えている人も多いだろうが、当時は「これはオーソドックスな漫才ではない」と評価されていたのである。

 

・翻ってマヂカルラブリーも、1人がボケ続けるのに対して言葉でツッコむ、という構造は何ら変わっていない。ただ、ボケが一切喋らず動きのみである、という点がやや斬新なのだ。霜降り明星をさらに進めた形である。従来の漫才のスタイルを少し変えることで、漫才を進化させる動きが、M-1によって一気に加速され、それは今も続いている。今年もまた漫才は進化したんだなあ、と感慨を持って迎えたい。

 

・私は以前からおいでやす小田さんを応援している人間なので、今回の結果は非常に満足。惜しくも2位、というのが、らしくて良いよね。