Ya Ya(あの時代を忘れない)

・『ラジオの昭和』(丸山鐡雄・幻戯書房)という本を読んでいて、気になる内容を見つけた。調査のしようが無いので、ここで紹介してしまう。なお、著者の丸山鐡雄はNHKのプロデューサーとして活躍した人物であり、丸山眞男の兄である。

 

・この書によると、昭和15年の秋に放送された「演芸お好み袋?」という番組は、「クイズ番組のハシリのようなものだ」という記述がある。内容は、「落語でおなじみの町内の顔役のご隠居さんが自分の家で懇親会を開き、芸自慢の連中にそれぞれ芸を披露させ、最後にアナウンサーが只今の司会のご隠居さんは誰、歌謡曲の若旦那は誰、浪花節の熊さんは誰という具合いに出演者名を発表する趣向」だったそうである。

 

・第1回のご隠居は徳川夢声(また出てきた)、他に東海林太郎小唄勝太郎柳家金語楼牧野周一らが出演した。で、第2回からは聴取者に出演者を当ててもらうハガキを募集し、正解者から抽選で百名に記念品を出したというのである。これをクイズ番組と言わずに何と言えばよいのか。

 

・正解者多数だったため、第3回では古川ロッパ徳川夢声声帯模写でご隠居役をし、前田勝之助浪曲物真似)が広沢虎造の声色を演じ、聴取者を引っかけようとした。それでも千人以上が正解したとある。なお、放送は第3回で終了している。

 

・「クイズ番組」という明確なジャンル分けが無い時分の話であるから、これを「クイズ番組のハシリ」と言えるかどうか疑問だが、戦前にも楽しいバラエティー番組を作ろうとしていた制作者がいたことは、記憶されても良いと思う。当該年度の『ラジオ年鑑』にも全く記載が無いし。でも、ラジオでラジオならではの番組を既に放送してた、ってすごくない?

 

・ということで、「独自研究」第2章もラジオ時代を取り上げる予定。いつ書き上がるやら。