反対というわけではないのですが

・ホントは1996年のマンオブについて書こうかと思っていたのだが、こういうのを見つけたので言及しないわけにいかない。いくつか思うことを。ロゴは「Q」と「?」を合わせたような形で、なかなか洒落ていると思うが、それは本題と関係ない。

・私がクイズの現状について最も批判したい点は、「クイズとして出題する内容や形式を広げようとしていないのではないか」ということにつきる。一定の出題形式やジャンルのみを掘り下げることで、本来「何でもあり」だったはずのクイズを、極めて狭いものに固着しようとしているように思われるからである。排他的だとさえ言える。

・お互いに「クイズに出る」と思われるジャンルで似たり寄ったりの問題をこしらえ、お互い出題し合って、同じ早押しポイントで答え合っている状況は、実は20年以上変わっていない。東大主催のオープン大会でアンケートクイズを行ったら批判を受けたのが1995年のことである。第2回K-1グランプリで関東が関西に寄っていったのが1995年である。私はクイズの固定化・狭隘化が決定的になったのが1995年だったと考えているが、その件はちょっと置いておく。

・で、明らかにこの協会が対象とする「クイズ」は、私が批判したいそういうクイズであるようだ。たとえばここ

(引用ここから)なかでもクイズと聞いて多くの人が真っ先にイメージするものといえば、やはりテレビのクイズ番組に代表される、知識を問う問題群に対して、いかに早く、たくさん、正確に解答できるかを複数の解答者が競う形式ではないでしょうか。(ここまで)

・いろいろ言いたいことはあるのだが、この文がいわゆる「競技クイズ」というものだけをイメージしていることは明らかだし、その元になっている「史上最強のクイズ王決定戦」あたりを「正統なクイズ」と位置づけていることもうかがえる。そう言えば次の「QUIZ JAPAN」の特集が「クイズ王決定戦特集」なのは、決して偶然ではなかろう。今自分たちがやっているクイズが正統派であることを、縷々説明する文章になるのだろう。法人の設立は、テレビ番組に変わる新たな「権威」「正統」の設定として、重要な意味を持っているのだ。

・もちろん、将棋でも囲碁でも麻雀でも、協会とか連盟というのは、そういう意味を持っている。それは確かだ。ただ、クイズはそれらに比べ、そもそも遊びとして「何でもあり」的な広がりをもつ営みである。どういうクイズが正統的かを決めるべきものではない。

・私は、このような法人の設立がクイズの裾野を広げることに役立つと思っているので、基本的に設立に賛成である。ただ、どうもHPを見ているかぎり、いわゆる「競技クイズ」で勝つためにどうするかに焦点があり、それ以上の広がりはない。例えば「クイズで遊ぶために、面白い問題を作るにはどうすればいいか」というアプローチは考えていないようである。クイズで一番重要なのは問題作りですがね。

・狭隘化しそうな状況はここにある「過去のクイズ大会の問題を閲覧することなどができる会員専用ページの開発や、会員限定イベントなどの開催に向けた議論を進めています。」からも危惧される。役員名簿から推測すると、旧「クイズの杜」サイトの問題なんかは、会員専用ページに移行されるかもしれない。そうすれば誰でも閲覧することはできなくなるわけで、クイズの裾野を広げる上で逆コースとなるのではないか。無料で会員登録できるシステムにするのなら全く問題ないわけだが。

このあいさつに「特に中高生の部活動の支援をはじめ」とある。何も知らない中高生に「こういうクイズこそが正しいクイズだよ」「こういう勉強をしないと公式戦で勝てないよ」「問題は金竜読みで読まないと相手にされないよ」などとアドバイスすることで「支援」するだけの集団にはなってほしくないものであると、切に願っている。少なくとも、面白い発想で問題を作る中高生の芽を潰すことだけは避けてほしい。クイズは「面白い問題を作る作業」が一番面白いはずなので。この協会の目標が青少年の育成なのだとしたら、ぜひそっちに力を入れてほしい。

・ま、もっと気楽に遊びのクイズをやりましょうよ。アタック25構成作家が言ってましたよ。「ま、気楽に遊んで帰ってください」と。