「中高生クイズ活動の支援について」について

・日本クイズ協会のページに「中高生クイズ活動の支援について」が発表されてから久しい。早く意見を述べねば、と思っていたが、体調不良だったのでしばらく置いておいた。

・一読して、この方が何を目指しているのか、いまいち伝わってこなかった、というのが正直な感想である。クイズは感動的なものだ、ということを強調したいのだろうが、こういう文章は冷静な視点で書かなければいけないのではないか。ということで、分かりづらい文章ではあるが、少し分析をし、意見を述べてみる。

・まず「1)中高生クイズ活動の公的地位の上昇」について。クイズ大会の結果を指導要録に(ということは調査書にも)記載したい、と言う点については、「書いても別にいいんじゃない」としか言いようがない。一般論として言えば、部活動以外の活動記録を指導要録という公文書に書き残すことは、何ら問題がないし、私自身実際書き残したこともある(クイズではないが)。例えば「第〇〇回全国高等学校クイズ選手権全国大会に、秋田県代表として出場した。」などと書いても、別に構わないと思う。

・ただ、クイズ大会の戦績を書くことにどれだけのメリットがあるのかと言われれば疑問。その戦績が世間的に見てどれだけすごいものなのかが評価できない以上、例えば大学受験の調査書に書いてあっても、無視されるのが一般的だと思う。調査書に「アタック25で優勝した」と書いてあったとして、受験で有利になることはまずないだろう。

・高文連の中にクイズ部会を作れるかどうか、という点については、現実問題として無理だと思う。というか、そもそもこの方は高文連に「どうやればクイズ専門部会を作れるか」打診したことがあるのだろうか。文面から察するに、たぶんないと思う。

・そもそも、高文連は教員だけで運営する連盟である。ということは、例えば埼玉県の高文連にクイズ部会ができたとして、何処かの学校がその事務局を担当し、その学校の校長(であることが多いが)が部会長を引き受け、加盟校(クイズ部がある学校、という意味)から会費(普通は数千円)を取り、加盟校の顧問が事務局業務や大会運営を分担する、ということだ。高文連クイズ部会は、日本クイズ協会が関与しない形で運営されなければならない。いわば、クイズの素人集団がクイズ大会を運営しなければならない、ということになる。

・で、大会をするとして、問題は誰が作るのか。高文連の早押し機(結構高いぞ)はどうやって用意するのか。クイズというゲームの特殊性に鑑みると、なかなかクリアすべきハードルが多すぎる。

・こういうことに対して、日本クイズ協会は支援できるのだろうか。もっとも、この文章には「高文連クイズ部会設立のためにどう支援するか」の案はほとんど出てきていないので、実はひそかに具体的に考えているのかもしれないが。

・長くなってきたが、「2)中高生クイズ研究部の安全面確保を含む活動支援」について。「今なぜ学校が本腰を挙げて活動を支援しないのか」とあるが、理由は簡単で、「そんなこと考えたこともなかった」というところだろう。それは冗談だが、実際のところ、学校というところは、学校で行われているすべてのことに本腰を挙げて支援するだけの、人的・金銭的・時間的・空間的余裕が存在しないものなのである(理由は長くなるので省略)。

・「実は、現在オープン大会等で学校名が多く使われているのは、この安全面の責任問題となったときに極めて問題なのです」。だったら学校名を使わず、学校以外の会場でオープン大会をすれば済む話である。「学校名を使った大会を行うので、あれこれ認めてください」という言い分が何でも通るわけではない。

・協会主催の大会について「保険加入に加え、選手派遣依頼文書を学校へ出し、教員の引率を義務付け、責任の所在を明確化させる。」とあるが、こうすることで「責任の所在」がどのように明確化されるのか。そこが明確に書かれていないので、この文章全体の意図をやや図りかねるところがある。ま、それはおいておく。

・そもそも、協会主催の大会に教員の引率を義務づけることは無理だろう。例えば、秋田県テニス協会主催の大会に部の生徒が出場したとしても、「教員を必ず引率につけてください」というような言い方はしてこない。我々が引率するのは原則として「高体連」「高野連」「高文連」主催の大会に限るからである(私立高校のルールはよく知らないが)。

・これは大会主催が参加費に保険料を上乗せしておけば済む話である。それでも気になるなら、保護者の同意書の提出を義務づければよい。この方はどうしても教員を引率させたいらしいが、「一趣味集団に子どもたちが出かけていく」ことなど、世間では非常に良くあること。趣味なんだから、基本は「自己責任」で参加するしかない。

・最後「3)クイズの間口を広げる~クイズ研究部設立支援~」について。クイズ研究会の顧問に図らずもさせられてしまった教員に、アドバイスをする教員(協会員、ではない)がいることは、たいへん結構なことだと思う。

・ただ、「学校への説得材料、早押し機提供環境の整備、公式問題集などの発行、お金の動きを生徒個人にさせない、」は、いずれもほんのちょっとのアドバイスで済む話であり、協会が全面的にバックアップしなければならないことでもない。問題なんか生徒が勝手に何処かから手に入れるだろうし、クイズの指導もあまりしなくていいだろうし(僕なら全然しませんね)。生徒が楽しそうにクイズをしているのを、陰で見守り、ちょっと手を貸す。まあ教員なんで、ブログに不用意に部員の写真をアップするのを止めてあげるくらいのことはしなきゃダメだけど、それは教員として常識的な指導だし。

・いずれにしろ、中高生への支援をするにあたり、教員に動いてもらおうとするのは、あまり上手くいかないのではないかと思う。協会主催or高校生主催協会後援の大会を複数実施する、位のサポートが現実的なところだろう。