オールオッケー!(実業団選手権大会より)

元号が発表されたときの色紙を見て、その字体に正直言ってがっかりした。普通、書家は「令」をあの形で書かないと思うからだ。

・あの形は活字体であり、伝統的な楷書の形ではない。手書きでは、やはりひとやねの下に点とマ、という形が良い。

文化庁の立場は活字体も含めて、かなりの範囲の字形をどんどん認めていく立場なので、「どの形でも良い」という見解しか述べないのは仕方がない。そもそも字の形など、国が決めるべきものではない。伝統的に、美しく書きやすい形が勝手に残っていくものだ。文化というのは、そういうものである。

・それなのに、あの色紙を見ると、「正しいのは活字体なんだな」と思う人がたくさんいたに違いない。伝統的に、手書きであの形は取られてこなかったのに。また、小学校では点+マで教えていることとの整合性もない。

・それでもなお活字体で書家に書かせたのはなぜか。それは、活字体を正しい書体として広めたいからだ。このところの漢字政策(なんだそれは)は、このブログでさんざん批判した阿辻哲次氏の意見なのか、とにかくIT機器で出てくる形を標準にしたいという力が働いているからである。

・だったら、それでいいじゃん、活字の形を正しい形にしようぜ、他は全部間違いね!としてしまうと、伝統的な(圧倒的に今まで書かれまくった)形を捨てることになりうる。そんなことをする国の何処が文化を大切にする国であるものか。

・ここで覚えていていただきたいことは、「活字体は、手書き形をデザイン化して作ったわけではない」という事実である。ただ、流石にそこまで説明するのはしんどいので、また今度。興味ある方は、康熙字典形について調べられると良いかと思う。

・久々に、クイズに全然関係ないことを書いてしまった。このブログでは、それもありなので。全国に公開したあの書庫で私淑する江守賢治氏の本を読み直しまくり、それはそれで至福のとき。ちなみに壁のVTRをよく見ると、漫才ブームの本の右に、江守賢治不朽の名著「解説字体辞典」が写っている。実に良いことをした。