毎度おなじみ、不要不急の番組タモリ倶楽部でございます

・クイズ史を概観する必要上から『クイズ用語辞典』を購入し、パラパラと読んでみた。まずはクイズを離れて、「本好き」という観点から感想を。

 

・第一印象は『なんとなく、クリスタル』の注釈のような感じ。クイズ関係のツイートとか文章とかを読んだら、こういう注釈がうじゃうじゃつくんだろうなあ、と。

 

・もっとも、『なんクリ』の注釈にはある種の批評性が感じられる(江藤淳がそう言ってましたね)のに対し、『クイズ用語辞典』は割と無色透明で最大公約数的な記述という印象。ただ、現在行われているオープン的な大会や、その界隈で使われるゴリゴリのジャーゴンに関する記述では、非常に筆の滑りが良くなり、少しだけ気持ちがこもる。そこが特徴と言えば特徴か。でもまあ、最低限の「滑り」である。全体には(わざとだと思うが)執筆者の個性を感じさせない記述に終始している。

 

・何でもネットで調べられる時代に、このような『用語辞典』を執筆するならば、記事が正確であることは当然として、そこに「執筆者の持つ『個性的で余計な』情報(思い入れとか、実体験とか、エピソードとか)」が含まれる必要がある。誠文堂新光社の「○○語辞典」シリーズが面白いのは、そうした要素がしっかり含まれた「そつのある」辞典になっているからであろう(『談志語辞典』はその最たるもの)。そういう観点からすれば、『クイズ用語辞典』はちょっと物足りない内容だったかな、と思った。あと、できれば索引がほしい。

 

・「そつ」について付言しておけば、今のクイズは全般的に見て、良くも悪くも「そつがない」。一方、私が好きなのは、クイズに限らず「そつ」だらけのものばかり。だから物足りなく感じたのかも。なお、日本のエンタメ史上最も「そつ」があったのは、たぶん「タモリ倶楽部」であろう。存在そのものが「そつ」なのである。だからクイズを取り上げたとき、あまり面白くなかったのだ。

 

・この辞典が将来において、クイズをする人たちを縛る「権威」になることは、たぶん無いと思う。この辞典の記述を元にして他人のクイズやクイズ論を批判する、ということも、あまり起きそうにない(それだけ無色な内容だ、とも言える)。だから内容については特に意見を述べない。ちょこちょこ気になること(「基本問題」と「ベタ問題」を殊更区別しようとする姿勢とか)はあるが、さして影響はないだろう。