なやみながら コトバさがしていたんです

・せっかく取り上げていただいたので、もう少しだけ追加記述を。社会的立場もあるので、なるべくソフトに。久々の長文です。言葉は相当選んでます。

 

・「敗者復活」の項目、「敗者復活」と書いたタスキが使われたのは第16回だけであり、それ以外のほとんど(名古屋以外)のタスキには「敗者復活者」と書いてある。辞典の記述として間違っているわけではないが、やや気になった。

 

・ということを書きたいわけではない。本題は「基本問題」と「ベタ問題」。

 

・私個人としては、abcの問題が基本問題であってもベタ問題であっても、そのことはどうでもいいし、たとえ「ベタ問題」が多く含まれていても、それを批判する気はない。ただ「abcの問題は、基本問題だからベタ問題ではない」という言い方がもしなされるとしたら、それは非常に不正確な言い方だと思う。同様に、「基本問題ってことはベタ問題ってことでしょ」と言う物言いも、非常に不正確だと思う。

 

・『クイズ用語辞典』では、「ここ(abcのコンセプトのこと…引用者注)での『基本問題』は、本書で立項したとおり、実社会での認知度に即した内容と問うているという考え方で、『ベタ問題』ばかりが出題されるという意味ではありません」(P114)と書いてある。記述に間違いがあるとまではいわないが、「基本問題だけを出します」=「ベタ問題ばかり出るわけではない」という関係が成り立っているような読み方が、できなくもない。しかしそのような関係はそもそも成り立たない。その理由を次に述べる。

 

・そもそも「基本問題」と「ベタ問題」では、指し示す概念が違いすぎる。「基本問題」は「出題内容」に関する分類から得られる概念であり、「ベタ問題」は「出題頻度」に関する分類から得られる概念であるからだ。だから、「ベタであり基本である問題」「ベタではないが基本である問題」「基本ではないがベタである問題(無名な賞の無名な受賞者とか)」「基本でもベタでもない問題」があり得ることになる。概念が違うから、出題する側が「基本問題」だと思って出題しても、受け取る側が「ベタ問題ですね」と受け取ることは、十分あり得る。

 

・だから「基本問題だけを出します」=「ベタ問題は出ません」という理屈は成り立たない。「何処にも出たことがない基本問題ばかり出てます」というのなら話は別だが、これは「abc」の実態と相当ずれている。同じように、「基本問題」=「ベタ問題」という議論も成立しない。

 

・「ベタ問題」と「基本問題」は、概念としては峻別される。しかし、あるクイズ問題を「ベタ問題」か「基本問題」か(それ以外か)に分けるのは誤っている。同様に、同一視するのも間違っている。最近「分ける側」「同一視する側」の両者による噛み合わない議論が起こっている状況が見られた。で、この辞典の記述は、「分ける側」に傾いているような気がした。そこが些か気になったのである(別に私は「同一視する側」に与したいわけでもない)。

 

・この本はあくまでも「読み物」であって、権威的な役割や議論の白黒をつける役割を果たすのは、たぶん著者の本意でもないだろう(だから私は読み物としての出来だけを論じたのだ)。「○○が入っていた!」「あの用語も入れて欲しかった」とかキャッキャ言って楽しむのがちょうど良いのだ。

 

・なお余談ながら、私の感じる「abc」の問題群の印象。題材的には確かに「基本問題」と言えるようなものがほとんどだが、ベタかどうかという観点から見ると、概ね「①超ベタ問題」「②実質的にベタになってしまっている前フリから始まる問題」「③ベタ問題に、先読みに役立ちそうな前フリをつけた問題」「④新しい題材をクイズ的な切り口で料理した問題」に分類できる(今急いで分類したものであり、非常に雑な分類ですが)。だから、「ベタもあるし、そうでないのもある」「ややベタっぽい問題の割合は高いかな」「ただ、一般の社会から解離した題材はほとんどないかな」というのが私の認識である。