現代口語クイズのために 序章

・現在、台本執筆中である。なので、たまには演劇部顧問らしいことを。

平田オリザの現代口語演劇理論の基本的な考え方に、「日本語では、強弱アクセントをほとんど使わない」というものがある。例えば、「俺はハンバーグにするけど、おまえは何にする?」と喋る際、普通どの言葉もアクセントで強調することはない。確かに問う内容は「おまえは何?」であるから、「おまえ」を強調して読んだり、それと対応する「俺」を強調して読んだりするのではないか、と理論的には思いうるのだが、現実としてそういうことはほとんどない。

・語順が固定されている言語であれば、強調すべき言葉を強めに言うことでしか、強調する方法はない。日本語は語順がわりあい自由であるから、平田理論によると「日本語では、強調したい語は前に持ってくる」となる。「その竿を立てろ」で、「立てろ」を強調したければ、「立てて立てて、その竿を」と言えばよい(『現代口語演劇のために』など参考著書多数)。

・クイズ問題の読み方はどうであろうか。『クイズモンスター・古川洋平のクイズ虎の巻』の前半を読んだ。金竜読みは福留氏や境鶴丸氏を元にした、と書いてあったが、あの2人の読み方をどう発展させれば金竜読みになるのか、いまいち分からない。福留氏はポイントを強調するような読み方を、あまりしていない。たぶん、単に日本語として分かりやすい問題文にすることしか考えていない。

・だいたい、ウルトラクイズの問題はそれほど早押しを可能にする文になっていない(早押しを拒否する文体、という話をいずれ書く予定)。前振りも決定的な限定でなかったりするし。パラレルも単純な構造だし(第9回アナポリスの問題を見ると分かりやすい)。ウルトラクイズの問題は、なるべく最後まで読むように作った問題文なのである。だからトメさんはたまに「問題は最後まで聞いてほしいなあ」的なことを言うのだ。

・クイズの中のごく限られた世界であのような読み方(とそれに合わせた問題作成)がスタンダードになるのは別に構わない。どのような競技にも、その競技特有のお約束は存在する。それに精通することが、競技に勝つ近道であろう。それは認める。ただこの読み方は、日本語の音声言語としての自然なあり方を追求した結果、生まれたものではないということは、はっきりさせておかなければいけない。要は、早押しを追求するという目的だけのために生み出された、人為的な(=不自然な)読み方だということ。だから、今後もし「テレビ番組でも早押しクイズは金竜読みをすべきだ」などと暴論が出てきたら、全力で反論するつもりである。もちろん、私自身は金竜読みは絶対にしないつもりである。日本語として不自然だから。

・まだ問題はあまり見ていないが、1問だけツッコんでおく。ガキの使い月亭方正氏が出演(参加ではない)したのは、第2回からではなく、第26回からである。詳しくはここの0:52あたりに。https://www.youtube.com/watch?v=FWONN5ySeYAウィキペディアにも掲載されていないことなので、紹介しておく。なお、ココリコについてはウィキの内容が正しい。

・yahooトップニュースにしばらく「素人クイズ番組なぜ減った」という記事が出ていた(元ネタはこれ)。そんなに需要のある内容だとも思われないが、似たようなこと(でもないか)を16年前に書いているので紹介しておく。ちなみにこの記事の筆者には弁護士の子がいて、その人もこのサイトに文章をいっぱい書いている。その内容は私にはほぼ賛同できないものばかりだった。芸人をバカにした表現が多く、読んでいて不快になることが多い。いろいろあるが、ひとつだけツッコんでおくと、この人が使う「フラ」という言葉の意味は明らかに間違っていると思う。この人の言うとおりだとしたら、「小三治師匠にはフラがある」という言い方は間違っているということになるではないか。