流れる雲を追いかけながら 本当のことを話してみたい

・前回の記事について「利権にしたいだけ」というコメントをいただいた。せっかく私がぼやかしたところを明示していただきありがとうございます。私も全くそのように思っております。

こういう記事にも、みなさんどう反応するか楽しみ。ただ、表立った反論はどうせ出ないだろうなあ。日本クイズ協会は、グランプリシリーズだけでなく、事実上「KnockOut」も押さえているわけで、大舞台で活躍したいプレーヤーが協会にもの申すことは多分無いよね。きっといろいろ渦巻いているんだろうけど、私のクイズライフには全く関係ないことだし。

・ただ、この記事からすると、様々な意見を持った人達が意見をすりあわせて、よりよい方向にクイズ界をもって行こう、とする意欲を協会は持っていないようだ。協会内に異なる考えを共存させ、議論を重ねて慎重に運営するのが公的な団体の正しいあり方だろう。一般論として言えば(あくまで一般論ですよ)公的な集団は、トップダウンのためにイエスマンだけを周囲に集めるような運営をしてしまうと、結局全体のためにならない結論を導いてしまう。どれだけ言い訳っぽい理屈を並べられたとしても(あくまで仮定ですよ)、その原則は変わらないと思う。

・さて、「KnockOut3」について考えたことがいろいろある。

・今回の「KnockOut」の問題は、ようやく競技クイズ的な難易度になってきましたね。第1回では視聴者にも分かりやすそうな題材を重視していたが、今回はわりと浮世離れした問題が多かったように思う(「卍」とかで出たようなやつとか)。「浮世離れ」というのは、完全にクイズ用の知識ばかりだった、ということ。もともと、このくらいの問題での戦いを放送したかったのか、本当はそうではないのか、まあきっと内部事情がいろいろあるのだろうが、その辺の感想は次回以降に回します。いずれ、こういう番組を放送すると、クイズをする人と見る人は完全に分かれます。

・そもそも、スポーツで言う「トップアスリート」に当たるような「競技クイズ界の強豪」になるためには、相当な努力が必要だ。「努力」と書けば美しく感じられるが、それを可能にするだけの時間をクイズにかけられる人が果たして世の中にどれだけいるのか。たとえばこういう風な努力とか。

・子育て中の田舎の地方公務員として平均的な生活を送っている(と思うのだが)私には、トップアスリートになる努力にかける時間は、絶対にない。よくビジネスマン向け学習ノウハウ本などには、「時間のやりくりをして」とか「早朝起きて時間をつくって」とかいろいろ書いてあるが、子育てとか家事とかに時間を費やす人のことは、たいてい想定していない。そりゃ1日30分とか1時間とかなら、とれないこともないけど、そのくらいがいいとこ。

・子供がいても子育てにあまり携わらなければ、勉強する時間はそれなりにとれるであろう。ビジネス雑誌(たとえばP社のP誌)などは、完全に家庭を顧みない労働者を相手にした話しかしていない。P誌には子供の学習について取り上げる「F~P~」という雑誌もあるが、「子供のお受験には専業主婦が隷属的に努力するのが好ましい」というメッセージしか私には読み取れない。いまだに「旦那は外で仕事、妻は子育て」を奨励している姿勢はまさにfossil。

・余談ついでに。たまに子供と遊んであげた、とか、毎日お風呂だけは入れてあげている、とか言ってイクメンぶっている人も気楽なもんだ。私から言わせれば「イクメン」なんていう言葉を軽々しく使っている状況が、ちゃんちゃらおかしい。

・どっかで書いた繰り返しになるが、私が「大人のクイズ」と言うのは、別に問題の題材が大人向けであるというような意味ではない。大人には仕事だの子育て(ガッツリ育てている人に限る)だの、自分の時間を作るのを妨げるものがたくさんある。クイズの勉強など、あまりできないだろう。そういう人達が趣味として、細々と続けられるクイズを志向したくて、そういう言葉を使っているのだ。

・例えば、本当に女性をクイズをする側(見る側ではない)に引き込みたかったら、ターゲットは絶対にキャリアウーマン(死語)だと思う。教養がそこそこあり、男とは違う得意分野を持っているから「あら、あたし結構答えられるじゃん、これ楽しい」と思わせやすい。

・「abc」的だろうと「KnockOut」的だろうと「何ちゃら甲子園」だろうと、トップアスリートを目指さなければ楽しめないようなクイズの状況が生まれることに資することは避けてほしいところ。トップアスリートを目指せる「クイズ貴族」はごく一部だ。「トップアスリート」と「それを見るだけの人」以外の、クイズをする人を増やすために何ができるかを考えることが重要。つっても難しいテーマだけど。